自治体の枠を超えた横のつながりが
EV・PHVの観光客増加の鍵
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台となる山口県萩市では、周囲の地域にも声をかけながら充電器を導入。萩・津和野・秋吉台のEV観光ルート確立を目指している。
2014年に設置された7カ所の中で最も充電器利用回数が多い「道の駅 萩往還」には、年間30万人ほどが訪れる。吉田松陰や坂本竜馬など幕末の志士たちも歩いた「萩往還」沿いにあり、萩の逸品が揃う。
自治体と萩を拠点とするメーカーが充電インフラをけん引
明治維新胎動の地として知られる萩市は、戦時における空襲の被害もなく、当時の面影や町割りがそのまま残っている。今でも江戸時代の地図がそのまま使えるのが萩の魅力の一つで、萩城跡や城下町(写真は菊屋横丁)をはじめ、多くの史跡が点在していることから、萩のまち全体を屋根のない博物館として捉える「萩まちじゅう博物館構想」を打ち立てている。
他の自治体へも積極的に呼びかけ
萩周辺のEVルートを確立
2015年NHK大河ドラマの舞台のほか、世界遺産登録への取り組みや2018年の明治維新150周年への動きなど、街の活性化が見込まれる山口県萩市。歴史ある街並みを保全する環境事業が盛んで、2014年春には道の駅など市内7カ所に急速充電器を設置した。
「4年前、県内の自治体に先駆けて急速充電器を萩市役所に設置しましたが、国とNCS(日本充電サービス)の補助金を活用しながら、萩市全域をカバーできるように場所を選定し、追加導入しました。さらに隣接する美祢市や長門市などと連携し、各地へのEVルート開発も進めています。
萩市は空港や新幹線の駅から離れた場所にあり、レンタカーを利用する観光客が多いため、EVでも安心して来られる観光地を形成したいですね」(萩市商工観光部 河野氏)
萩市から島根県の津和野町や吉賀町にも働きかけたことで、両町の充電器導入も決まった。こうした県の枠を超えた、横のつながりを構築することが、EV・PHVインフラ拡充の一つの鍵になるだろう。
萩市を拠点に置く
EV充電器のパイオニア
EVが脚光を浴び始めた2010年頃から、いち早くEV普通充電器の開発に着手した「サンワ」は、萩市を拠点に、設置者の負担が少なく導入できる課金式充電器を製造している。
「行動範囲があまり広くない高齢者が多い地域では、普通充電器の需要が高く、特に離島でのEV・PHVの普及は期待できるでしょう。
NHK大河ドラマ「花燃ゆ」ヒロイン・文の兄・吉田松陰が主宰した私塾『松下村塾』。文の夫・久坂玄瑞や奇兵隊を率いた革命児・高杉晋作、初代内閣総理大臣・伊藤博文など、明治維新で活躍した志士を数多く輩出した。
サンワの萩営業所にも普通充電器を2基設置。「ガソリンスタンドが少ない地域こそ、EV・PHV普及が望まれる」と考える谷氏は、自社のEV車を走らせながらPRしている。
当社では筐体の塩害対策に力を入れていますが、充電器を導入する際は、島国である日本の地域特性も考慮した選択が必要だと思います」(サンワ 会長 谷氏)
サンワが開発した、EV充電器の技術を応用したキャンピングカー向けの電源スタンドも人気だ。アイドリングによる騒音や排気ガスの問題を解消し、設置された「道の駅 ゆとりパークたまがわ」には、連日のようにキャンピングカーが訪れているという。
萩市
【住所】山口県萩市江向510【充電器設置場所】道の駅6カ所(ゆとりパークたまがわ、うり坊の 郷katamata、
ハピネスふくえ、萩往還、あさひ、萩・さんさん三見)、JR須佐駅前駐車場、萩市役所、自動車ディーラー店舗
【充電器タイプ】急速充電器 計9台【充電料金】NCSに加盟(2014年12月~)【利用可能時間】24時間
※原稿は、2014年11月18日に取材した内容を元に作成。