EVタクシーと充電器の配備で
観光客にエコな富士山をアピール
2013年に日本で17番目の世界遺産に登録された「富士山」。その麓に拠点を置く「富士急行」は、富士山の環境を守るために、充電器の導入をはじめ、数々の環境事業に取り組んでいる。
「河口湖駅」と「富士山駅」(旧「富士吉田駅」)の2拠点で運行しているEVタクシー。乗車できた観光客からは、喜びの声が多数届いているという。
EVタクシーやCNGバスの先行導入で、富士山の環境を守る
富士山が世界遺産に登録された後、観光客は2割増加した。特に中国や中東をはじめとする外国人観光客は、河口湖だけでも2014年の上期時点で、前年より約22,000人増えているという。観光バスを利用する一方、公共交通機関により個人で訪れる外国人も多いなか、表記の多言語化や食事制限の対応など、受け入れ態勢の整備が課題の一つになっている。
関東圏からのEVユーザーの
利便性向上に加え、
EVタクシーの稼働率もアップ
鉄道やバスなどの運輸事業とレジャー事業、不動産事業(別荘地の販売等)を事業の3つの柱とする富士急行では、富士山の環境保護に配慮した公共交通機関を推進している。2013年のEVタクシー導入に続き、2014年には河口湖駅前の有料駐車場に急速充電器を設置した。
「東京から約100㎞の距離に位置する河口湖駅に設置したことで、充電を気にせず富士山の麓に訪れることが可能になりました。EVタクシーの稼働率向上の目的もありますが、観光の拠点という視点からも、充電器設置には河口湖駅がベストな位置だと判断しました。一般利用者はまだ月10台ほどですが、ドライバーが気づきやすい場所に設置されていることもあり、今後利用者は増えていくと考えられます」(富士急行 交通事業部 自動車担当 野口氏)
粒子状物質にも配慮した
環境に優しい公共交通を推進
4台のEVタクシーは観光客に大変好評で、河口湖近辺の観光のほか、富士山5合目までの移動手段としての利用も多い。目的地までの距離やEVタクシーのバッテリー具合を見極めながら、通常のタクシーともローテーションさせているが、観光地のタクシー利用では、長距離移動は少なく、EVタクシーの需要拡大が期待できる。
また、富士急行では「富士を世界に開く」という企業理念のもと、新たなエコ事業にも取り組んでいる。
河口湖駅前の有料駐車場に設置されている急速充電器。1回500円だが、充電器の利用者は、駐車場が1時間無料になる。充電器は一般EVユーザーへの提供のほか、EVタクシーの充電にも活用している。
河口湖駅前のロータリーには、富士急行(旧・富士山麓電気鉄道)の開業当時に新造された電車「モ1型」が展示されている。1929年から1983年まで、改造を重ねながら数々のシーンで活躍した。富士急行の創業60年を記念して開業時の姿に復元。
「粒子状物質(PM)などを排出しないCNGバスやハイブリッドバスを導入したほか、2014年8月には燃料電池バスの実証実験も行いました。
富士急行は、富士急ハイランドや遊園地ぐりんぱ(静岡県裾野)をはじめ、さまざまな観光拠点を運営しているので、それらの施設にも充電器を設置し、さらなるEVインフラの拡充にも貢献していきたいですね」(野口氏)
幅広い地域をカバーする電鉄業界の中で、先行してEVインフラ事業に取り組む富士急行。これに続く、新たな電鉄会社の登場にも期待したい。
富士急行
【住所】山梨県富士吉田市新西原5-2-1【充電器設置場所】河口湖駅前駐車場
【充電器タイプ】急速充電器 1台
【充電料金】1回500円【利用可能時間】 24時間(年中無休)
※原稿は、2014年11月12日に取材した内容を元に作成。