xEV:電動車(BEV,PHEV,HEV,FCEV)の総称
BEV:電気自動車、PHEV:プラグインハイブリッド自動車
HEV:ハイブリッド自動車、FCEV:燃料電池自動車
開会式、講演、展示会、試乗会の動画まとめ(約4分間)
EV関連分野の世界最大級のシンポジウム・展示会「The 31st International Electric Vehicle Symposium and Exhibition」(EVS 31)が9月30日からの4日間、神戸コンベンションセンターを会場にして開催されました。
日本でEVSが開催されるのは、1996年の大阪(EVS 13)、2006年の横浜(EVS 22)に続いて3回目、12年ぶりの開催となりました。
初日は接近する台風の影響で開催が見送られましたが、台風一過となった10月1日は、一転して青空が広がる秋晴れ。xEV業界の最新トレンドを知ろうと、世界各国から数多くのゲストが来場しました。
当センターも展示会に出展、EVS 31の様子も取材してきました。
本レポートで、EVS 31を彩った出展ブースの内容や試乗会の様子、基調講演やパネルディスカッションの様子をご紹介します。(取材日:10月1日)
名称 | EVS 31&EVTeC 2018 第31回国際電気自動車シンポジウム・展示会&EV技術国際会議2018 |
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開催期間 | 2018年9月30日(日)~10月3日(水) (9月30日の展示・試乗会は台風のため中止) |
開催場所 | 神戸コンベンションセンター(神戸国際会議場・神戸国際展示場) |
展示会規模 | 15ヶ国 198社・団体(共同出展含む) |
参加人数 |
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開会式では、EVS 31組織委員長である日産自動車株式会社副社長の坂本秀行氏、神戸市長の久元喜造氏らが挨拶。
その後、経済産業大臣政務官大串正樹氏による来賓講演があり、「自動車新時代戦略会議」で取りまとめられた中間整理に基づき、燃料から走行までトータルでの温室効果ガス排出量をゼロにする”Well-to-Wheel Zero Emission”にチャレンジするという長期ゴールを打ち出すとともに、国際連携の重要性を述べられました。
基調講演では、台風の影響で出席が叶わなかった日産自動車株式会社副社長のダニエレ・スキラッチ氏に代わって、EV・HEV技術開発本部アライアンスグローバルダイレクターである鳥海真樹氏が登壇。販売する車の約25%が電動車両になった現状をさらに加速させ、その比率を2022年までに40%、2025年までに50%に高めていくと、中期計画の内容を改めて宣言。2022年までにEV、HEVをあわせて年間100万台の販売を目標に据えるとしました。
登壇者一覧 | ||
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開会式 | 坂本 秀行 | EVS 31組織委員長/日産自動車株式会社 副社長 |
堀 洋一 | WEVA(世界電気自動車協会)/EVAAP(アジア太平洋電気自動車協会)会長 | |
永井 正夫 | 一般財団法人 日本自動車研究所 代表理事 研究所長 | |
久元 喜造 | 神戸市長 | |
来賓講演 | 大串 正樹 | 経済産業大臣政務官 |
基調講演 | 鳥海 真樹 | 日産自動車株式会社 EV・HEV技術開発本部 アライアンスグローバルダイレクター |
歓迎スピーチ | C.C. Chan | EVAAP 副会長/香港大学 名誉教授 |
(敬称略)
経済産業省の声掛けをきっかけに、国際的なエネルギー施策に関する有識者をパネリストに迎えたトークセッションが実現。それぞれが5分程度のプレゼンのあと、モデレーターからのQ&Aに答えた。
経済産業省製造産業局の石川浩氏からは「自動車新時代戦略会議」で取りまとめられた中間整理に基づき、日本の2050年の長期ゴールとそれに向けての具体的な政策が発表された。
中国のEV100のOuyang Minggao氏は2030年には市場の40%をBEV、FCEVなどの次世代車へと置き換わることを目指し、航行距離や航行効率などに応じたインセンティブの策定が急がれている等、中国の現状が紹介された。
モデレーター | IHS Markit社(ロンドンに本社を置く自動車情報サービス企業) Tom De Vleesschauwer |
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日本 | 経済産業省 製造産業局 自動車課 電池・次世代技術室 室長 石川 浩 |
中国 | China EV 100(中国電気自動車百人会、中国の電動車普及推進団体)精華大学教授 Ouyang Minggao |
欧州 | VDA(ドイツ自動車工業会) Claas Bracklo |
英国 | OLEV(Office for Low Emission Vehicles、英国政府) Nicholas Brooks |
IEA | IEA(国際エネルギー機関) Pierpaolo Cazzola |
(敬称略)
10月1日最後のプログラムとなったパネルセッションではインテル株式会社の事業企画・政策推進ダイレクター野辺継男氏をモデレーターに迎えてトークを展開。経済産業省、トヨタ自動車株式会社、KDDI株式会社の代表者を交えて、現在の技術トレンドが進むとモビリティサービスがどうなっていくか、さまざまな側面から捉えた意見が発表された。
再生可能エネルギーの利用が盛んなカナダのケベック州がブースを出展。ケベックは豊富な自然資源を利用した州立の水力発電所があり、電気料金は北米で最安値クラス。アメリカのカリフォルニア州などと共に、ゼロエミッション車(ZEV)の普及を目指すアライアンスに加盟するなど、xEVがいっそう注目を集めている。今回の展示では、産学官が連携した強固なサプライチェーンのなかから、バッテリーや光ファイバーの企業など数社が参加した。
グローバルな充電技術に関する業界標準をつくるために組織されたCharging Interface initiative = CHARINには日本の自動車メーカーを含めた世界155組織が加盟。通常充電と急速充電をひとつのコネクタで行うことができるCombined Charging System (CCS) など、国やメーカーを気にすることなく充電しやすい仕組みづくりを行っている。展示では、400kW/500Aのハイパワー充電ができる設備など、高出力の充電設備を多くの人が見入っていた。
深刻な大気汚染への対策も課題となっている中国は、自動車メーカーに一定以上の新エネルギー社の生産・販売を義務付け、国家をあげてEV業界の支援に乗り出しているEV先進国のひとつ。EVS 31では中国国内のサプライチェーンを形成する15社が合同で出展。バッテリーから充電のインフラにいたるまで、幅広い業界の盛り上がりを伺わせる展示となった。
電気自動車の充電・給電分野で国内の市場をリードするメーカーのひとつニチコン。今回の展示では、電気自動車の蓄電池を家庭内と融通し合うことができるV2H(Vehicle to Home)や電力系統と連系するV2G(Vehicle to Grid)の考えに基づいた製品を展示。日本国内ではまだ電力系統との連系は少ないが、ピークカットやピークシフトによるメリットが大きいため、今後の成長が期待される分野のひとつ。V2Gのさらなる普及を目指し、系統連系ができるEVパワー・ステーションの前には、災害時に家庭での非常用電源にもなるとして、多くの来場者が足を止めていた。
白物家電やエレクトロニクス分野全般にわたる総合的な電機メーカーとしての印象が強いパナソニックは、EVS 31にあわせて電池分野に絞った展示を企画。高容量・高出力という、トレードオフされるべき要素を車種ごとにバランスよく開発する技術力はいまや世界最高クラス。今回の展示は、テスラと提携したメガソーラープロジェクトなど、充電分野において二人三脚でカーメーカーを支える同社の品質を改めて示す機会となった。
日産のブースでは累計で世界最大の販売台数を誇るリーフの電動化技術を紹介。新型発表のたびに大幅に航続可能距離を伸ばすその技術力が注目を集めていた。EVの特性をうまく利用した“e-pedal”は、試乗会でも好評を得ていた機能のひとつ。発進、加減速、停止をアクセルペダルだけで行える快適な乗り心地は、コアなEVファンのみならず、多くの人に楽しみを提案している。その他にも、高速道路同一車線自動運転技術や3ステップだけで済む自動パーキング技術など“環境に優しいだけじゃない日産”を大きくアピールする場となった。
モビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタのブースでは、電動化、知能化、情報化に関する最新技術を展示。「すべてのひとに移動の自由を、歓びを」をテーマに、人やモノを運ぶだけでなく、人の心まで運ぶ企業として、社会全体の暮らしを大きく捉えた内容となっていた。2018年1月に開催されたラスベガスの見本市CES(Consumer Electric Show)において初めて発表された移動、物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス専用次世代電気自動車“e-Palette Concept"についても紹介され、モビリティをプラットフォームにした新しい社会の提案として、大きな注目を集めていた。
先進的なコネクティッドカー技術を有する三菱は“Mitsubishi Connect”を色濃く体現したブースを出展。家庭への普及も進むスマートスピーカーを使った車両コントロールなど、情報ネットワークと車を一体化させたサービスを前面に押し出し、今までにないカーライフを提案。V2B(Vehicle to Building)の分野では、海外においてPHEVとオフィスや工場へ電力を供給する実証実験がスタート。クリーンエネルギーの互換性を高める取り組みとして、今後のさらなる展開が期待されている。
世界に先駆けて電気自動車用の急速充電の規格を取り決め、その標準オペレーションの策定と促進を行っているのがCHAdeMO協議会。
自動車メーカーや電気メーカーを中心に世界約400社が所属する同協議会からは、会員企業数社が共同で出展、急速充電器やコネクタなどの最新製品が紹介された。今後、さらに充電器の小型化、ハイパワー化を目指すにあたって、自動車メーカー・充電器メーカーなどが企業の壁を超えたフレキシブルな連携が求められるなかで、同協議会がそのハブとなり、業界を大きく前進させる原動力となることを大きく印象づける展示となった。
自動車の環境・安全にまつわる課題解決のための幅広い研究をおこなっているのが日本自動車研究所(JARI)。EVS 31では特に安全で安心な充電インフラを前面に押し出した展示が行われた。普通充電器の認証制度をJARIが運営していることもあり、充電器と電気自動車の間の信号のやりとりに関わる国際規格に則った技術を、実際に電気信号を測定する機械の波長で見て紹介するなど、安心のベースとなる技術がわかりやすく紹介されていた。
電動車両への安全なAC充電の普及を促進する電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)は、30社ある会員企業から11社が共同でブースを出展。防災・減災の社会的意識の高まりを背景に、V2Hを実現する充電・放電分野の技術が注目を集める昨今、急速充電器に比べて設置コストが安い普通充電器は、新設マンションや住宅、商業施設・事業所などへの設置に最適であるとして、今回の会場でも多くの人の目を惹いていた。
当センターは、センターで実施している補助金制度、日本における次世代自動車並びに充電・水素インフラの状況をパネルで紹介。
展示会で紹介したパネル・パンフレットはNeVサイトでも公開している。こちら
青く晴れ渡った神戸の空の下、EVSの特長的なプログラムのひとつといえる最新の電動車両(4輪・2輪)の試乗イベントが開催された。
日産リーフに試乗した方からは「車内がとても静かですね」「思っていたよりパワーがある」といったEVならではのポジティブな感想が聞かれた他、日産の新しいコンセプト“e-pedal”を体感した人からは「ゲーム感覚でドライビングを楽しめる」との声があった。
総じて電動化に深く興味を持っている人が多く、プリウスに試乗したアメリカ人ゲストのなかには、テスラやバッテリーサイズをカスタマイズしたプリウスを所有したことがある上級者もいた。数年前まであった「航続距離が短い」「充電ステーションが少ない」などのネガティブな声は少なく、加速や燃費をメリットとして捉えて真剣にEVを検討する層の多いことが印象的だった。